これまでの公共トイレのメンテナンス体制は・・・ 非常に立ち遅れており、トイレ建設後のメンテナンスフォローが十分に行われていないところが目立ちます。それは管理者や設計者にトイレメンテナンスに関する的確な情報が伝わっていないことや理解不足が大きな原因となっています。管理者、設計者、メンテナンスワーカーは互いに情報交換を行い、メンテナンスの作業内容やメンテナンス性の良いトイレづくりについて話し合う必要があります。さらに利用者の使い勝手に関する意見も含めて話し合うことで。快適なトイレが維持できるのです。そこでその情報交換の一助になることを願い、本書を作成しました。
公共トイレのメンテナンスについては、これまで作業内容や作業方法についての基準となるものがなく、管理者が個人の知識の範囲で仕様を決定しているのが現状です。使用されている用語、内容も管理者ごとにまちまちであり、そのことがメンテナンス体制の改善の妨げにもなっています。例えば、「定期清掃」という項目をひとつ取ってもAという管理者とBという管理者では使用内容が全く違っていたり、「特別清掃」という呼び名で「定期清掃」と同じ内容のことを行っていたりという具合です。また日常清掃、定期清掃以外に技術者が専門的に行うメンテナンス(プロフェッショナルメンテナンス)の分野については存在さえ知らない管理者が多く、処置すればきれいによみがえるにもかかわらず、汚れたままになっている公共トイレが目立ちます。 本書では、作業の仕様を標準化するとともに、 新しいメンテナンスの分野を紹介し、基本的な清掃まで一つ一つ定義づけています。本書をメンテナンス体制整備の資料として管理担当者にご活用いただければ公共トイレの快適性の向上と建設や設備の延命にも役立つことでしょう。 本書はトイレのメンテナンスマニュアルとしては内容的にはまだまだ不十分な点がありますが、今後は本書をたたき台として第2、第3弾と内容を深めていきたいと思っています。 〈公共トイレの定義〉 公共トイレとは不特定多数の人々が利用するトイレを指しており、戸建てタイプ、施設付帯タイプのいずれも含みます。 本書では主にウェット清掃の場合を意識して説明していますが、「第1章 管理者マニュアル」については清掃方法に関わらず活用していただけます。 (本書1Pより抜粋)
<目次>
■第1章 管理者マニュアル
1.トイレのメンテナンス体制とは
2.トイレの現状把握
(1)トイレの汚れと傷みについて
(2)尿石について
3.トイレメンテナンスの5つの要素
(1)日常清掃
(2)点検
(3)定期清掃
(4)プロフェッショナルメンテナンス
(5)修繕
4.5つの要素の作業者と作業配分
5.メンテナンス体制と汚れの関係
6.メンテナンス体制にあたって
(1)メンテナンス体制整備までの手順
(2)基本清掃の重要性
(3)基本清掃体制と問題点と改善ポイント
〔コラム〕「1人で1日25か所の清掃では効果は上がらない」
7.汚れない、壊れないトイレ対策について
(1)予防メンテナンスについて
(2)利用者へのインフォメーション
(3)トイレメンテナンスがしにくい状況例
〔コラム〕「メンテナンスの良いトイレは災害時にも有利」
〔豆データ〕「トイレットペーパーの消費量について」
■第2章 メンテナンスワーカーマニュアル
1.日常清掃
(1)日常清掃の用具
(2)日常清掃の内容
〔豆データ〕「ラバーカップの正しい使い方」
2.点検
(1)点検のチェックリスト
3.定期清掃
(1)定期清掃の用具
(2)定期清掃の内容と頻度
〔豆データ〕「洗剤について」
4.プロフェッショナルメンテナンス
(1)小便器の汚れと悪臭の除去
(2)大便器の汚れと悪臭の除去
(3)洗面器、清掃用具の汚れの除去
(4)排水管の詰まりの除去
(5)室内の汚れの除去
(6)外装の汚れと除去
(7)雑菌処理
5.修繕
(1)トラブルと対策事例について
(2)設備管理台帳について