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報告レポート(133回)





2010年3月15日(月)15:00〜18:30
会場:INAXダヴィンチ京橋ビル(東京都中央区)

■提案試作中のオストメイト対応便座の形状とメンテナンス等の意見交換会

■開発説明者:
(株)ジーネスト 安西章司氏

トイレアドバイザー 片桐栄一氏

   
 今回は、オストメイトになられたご友人から相談を受け、オストメイトでも健常者でも使える、便座の開発に挑戦なさっているお二人からお話を伺いました。まだ商品化の予定はありませんが、昨今普及しているオストメイト器具の維持管理の仕方も含め、活発な意見交換が行われました(16名参加)



1、片桐栄一氏より:自己紹介と開発経緯

 私は以前、特殊便座を扱う会社で営業を担当していました。具体的には公園や刑務所のトイレなど、壊されにくいステンレス製やFRP製の便器を扱っていたのです。
 安西氏とは、10年前に知り合いました。本業である建築業の傍ら、自らトイレ商品を開発していた安西氏は、ものづくりの名人です。そこで私が企画と広報担当するという具合で、お互いに知恵を出し合い、これまでに便座シートが自動的に付着する便座や、高圧洗浄で便座を衛生的に丸洗いできる装置の開発を行ってまいりました。
 そんな中、安西氏の友人を通じて、「オストメイト」の方がトイレで苦心されている現実を知りました。「オストメイト」とは、人工肛門で排泄をなさる方のことで、肛門からの排泄と違い、中腹あたりに直接腸の一部を出し、パウチという袋を付けて、排泄物(液状やドロドロ状)を付け止め、定期的に中身を出し患部を清潔にする必要がある方のことです。
 普通の身体障害者と違い、衣服の中にパウチが隠れてしまうために、外見では分かりにくいのですが、日本では大腸がんや潰瘍性大腸炎が急増しており、現在、50万人もいるだろうと言われています。そこで二人でオストメイトの対応トイレを、開発し始めました。




2、安西章司氏より:オストメイト対応便座の開発について

 オストメイトの方の設備が、公共トイレに設置されるようになってから、数年が経過しました。いろいろ試行錯誤して開発されたのだと思いますが、私の友人の場合は、「もっと現場の声を反映してほしい」と訴えています。つまり彼らの求めるトイレとは、オストメイトと健常者を分けるのではなく、「一緒のものを自然に使いたい」という欲求です。
 オストメイトは、定期的にパウチにたまった排泄物を出さなくてはならないのですが、それを行うのに、パウチの先端を開き、チューブから中身を出すように、押し出さなければなりません。それを普通の便器で行うために、便器に向かって中腰姿勢で行うと、汚水が跳ねたり、衣服を汚したりしてしまいます。なので、床に膝を立て、便器に向かって、かがむような姿勢にならなくてはなりません。しかし、これでは不衛生で、高齢者の多いオストメイトには苦痛です。また便座に座ったまま行うには、腰を極度にかがんでしなくてはならないので、腰が負担になります。それから公共トイレのオストメイト設備は、不特定多数の方の汚物が触れた汚物流しに、患部を直接触れる可能性があるため、感染症の危険が伴います。
 そこで、「どこのトイレでも」「座ったままで」「清潔で無理なく」行える事がポイントと判断しました。



3、座ったまま使える便座の開発

 では具体的に紹介します。


 私達の提案は、「今使っている便器の上に、オストメイトが使える便座を置く」案です。具体的には、普通の便座の口径より前部分を広げ、奥部分も伸ばすという具合です。本当でしたら樹脂製にしたいのですが、今は試作のため木を削ってみました。この形状ならば、座ったままでパウチの中身を出す事が出来るという具合です。座り心地は決して良いとは言えませんが、これなら家庭の中で、家族と同じトイレを使うことが、可能になるのです。また温水洗浄便座も使えるようにも、考えられています。
 しかし課題や欠点もあります。一つは、メーカーや便器ごとに形やサイズが違うので、それぞれに合わせた加工をしなくてはならない事。二つ目は、近年に増え始めた節水用便器は小型化されており、十分な奥行き(長さ)がないので、古いタイプの便器が必要な事です。だから「今のトイレの便座だけを交換すれば…」と安易に思うかも知れませんが、実際は便器の長さを図るなど、オーダーメイドの必要があるので、大手企業の流通では扱いにくい現実があるのです。
 ただ、利用者からは、「大変便利だ」「早く普及してほしい」「本当にありがたい」と涙ながらの感想を頂戴しています。オストメイトになった方にとっては、肉体的苦痛ももちろん、精神的負担が大きく、中には家族や友人に告白できない方もいます。どのトイレでも気軽に使えるように出来れば、きっと心の負担を軽くできるのではないかと思うのです。
 そして欲を言うなら、もっと多くのオストメイトに感想や意見を伺えれば…思っています。私は本業の合間に、自分の友人のために開発しましたが、もっと多くの方のお役に立てるのなら…と願っています。





4、会場からの意見や質問

○意見1:病院にこうした設備があるべきなのに、無いし、指導も未熟だ。
○意見2:介護保険制度の認定者対象の住宅改修補助金の福祉用具カタログに掲載されればいいのではないか?
○意見3:トイレ清掃をする方は、この現状を知らない。清掃者側の感染の危険性もあるので、もっと教育すべき。
○意見4:オストメイトの使うトイレのメンテナンスを研究していくべきだ。たとえば除菌クリーナー(使い捨てのウェットティッシュ)を、そばに置くとか、それで床を足で拭いてそのまま投函できる床用ゴミ箱を置くのはどうだろうか?
○意見5:国土交通省が平成19年に発表しているガイドライン「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」によると、オストメイト設備を付けるように義務化しているが、まだこれらの視点が無いので、反映させるべきだろう(例;普通個室にもオストメイト用便座を設置するなど)。
○意見6:新幹線のトイレにもオストメイト対応設備が導入され始めたので、参考にしたい。
○意見7:インターネットなどで呼びかければ、引き合いがあるのではないか?




5、感想

 これまでオストメイト対応の設備が増えたことは周知してきましたが、自宅での工夫の必要性を初めて聞いて『そうか!』と開眼しました。潰瘍性大腸炎は若い方がなるそうなので、きっと多世代からの支持があると思います。

(報告:白倉正子)


片桐氏はメンテ研のベテラン会員です。

実演しながら説明して下さった安西氏です。

設置が義務化されたオストメイト設備(手前)。シャワーやフックが付帯されている。

口径が広い新しい便座の提案です。

わざわざ静岡県から東京まで、試作品を持参して下さいました。

参加者は質問したり、実際座ったりと、熱心に見聞きしていました。


前部分にこれだけの大きな空間があれば、座りながらのパウチ作業も可能です。

【提案(オストメイトの使える便座)を書いたチラシ】


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