トイレ博物館

“水の心”を知り尽くしたヨーロッパの伝統美


トイレ文化を語るとき、お国柄の違いは勿論のこと、時代によって様々な特色がみられます。オーストリアにあるラウフェン・トイレ博物館には、19世紀末に製造された芸術品ともいえる便器や洗面器がコレクションされています。デザイン的に美しいだけでなく、使い勝手を考慮した機能美も兼ね備えている優れものの数々です。
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ラウフェン・トイレ博物館から学ぶもの

以前、オーストリアのクムンデンという町にあるラウフェン・トイレ博物館を訪れた時のこと、館長のフリッツ・リスカ氏のお出迎えを受けました。この博物館はトイレメーカー、ラウフェン社の工場の建物の一つが博物館になっています。リスカ氏がここの工場長だった1966年、町の改築中のある男爵邸の前に捨てられていたゴミの中から、アンティークな絵柄の便器を見つけ、譲り受けたのがコレクションの始まりだそうです。
コレクションのほとんどが、19世紀末にヨーロッパで製造された便器や洗面器で、その形や色、絵柄の美しさは絶品。当時のトイレ様式で人気を集めたというネオロココ調のものや、色彩鮮やかなネオルネッサンス調のものなど、ヨーロッパの代表的なデザイン様式に彩られた、まるで美術工芸品ともいえる見事なものばかりです。
そんな中で私の目を引きつけたのは、リムの部分に溝がついた洗面器です。リムが内側に向かってわずかに傾斜しているので、リムの上には水が溜りません。さらに石鹸置きの部分から洗面部分に向かって付けられた筋状の溝が、水たまりを防ぎ、洗面台はいつも清潔。水は低い方に流れるという、まさに”水の心”を知り尽くした設計です。最近はシンプルなデザインが流行し、びしょびしょになった洗面カウンターを見かけますが、単にデザイン的に美しいだけでなく、優れた機能性を兼ね備えた一世紀も昔の洗面器に、これからのトイレが進むべき方向を見たような思いでした。
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