ホテル・レストランのトイレ
心を満たす、モナコの粋とエレガンス
世界のファーストリゾートとして、憧れを集めるモナコ。「風景そのものが芸術」と言われるほど美しく、優雅な街並みは、古くからヨーロッパの王侯貴族や大富豪たちを魅了してきました。世界中の人たちをひきつけてやまないモナコの魅力を、水まわりから探ってみましょう。
長い歴史のなかで培われた気品と洗練が「モナコスタイル」
私にとってのモナコは、ヨーロッパの芸術的伝統と、ミラノやパリの現代的なデザインセンスが絶妙に調和した国だということ。ヨーロッパの人々が、思いを込めて大切に育んできた密度の高い文化が、そこには息づいています。私がそれを強く感じたのは、モナコのオペラハウスにバレエを観にいった時でした。パリのオペラハウスを模したという建物は、規模こそ小さいものの、デザインにも色づかいにも、いかにもモナコらしい品格と洗練が息づいていました。そこで上演されるバレエも、衣裳といい、音楽、振り付けといい、なんとも粋で、趣味のいいもの。品よい空間で、品よく舞われたバレエが、ヨーロッパの上流階級の品のよい観客によって鑑賞されていることに、深い感銘を覚えました。私には、モナコという国自体が、たくさんの素敵な物語を生む劇場のように思えます。

10種類近いタイルが使われているバスルーム。空間の奥行きと温かさを感じさせてくれる点は、ぜひ日本でも参考にしたい好例。(エルミタージュホテルモナコ)
タイル一枚、小物ひとつにもヨーロッパの美意識が
モナコのホテルで最も印象に残ったのは、この国でも屈指の4つ星ホテル「エルミタージュ」です。ベルエポックの面影を残した重厚なたたずまいは「ヨーロッパで最も美しい建造物のひとつに数えられるほど。世界中から多くのVIPを迎えてきた伝統あるホテルです。ここに泊まって気づいたのは、ベッドルームのインテリアが部屋によって全く違うことです。日本のように白やベージュばかりの画一的な部屋づくりではなく、ブルー系の部屋ありピンクやブラウンを基調にした部屋ありと、実に多彩。ひとつの部屋はカーテンや壁紙から、じゅうたん、ベッドカバー、ランプのシェードに至るまで、同じ色で統一され、しかもそのイメージがバスルームにまで貫かれています。
ベッドルームの延長線上に「もうひとつの部屋」としてのバスルームがある。この考え方が、ヨーロッパの水まわり文化を豊かにしてきた要因だといえます。リビングのインテリアを選ぶように、バスルームのタイル一枚、水栓金具ひとつにも注意をはらう。一番くつろげる部屋だから、機能にも、デザインにも「本当の心地よさ」を追求する。バスルームへのそんな美意識が、モナコのホテルには集約されているような気がします。
ベッドルームの延長線上に「もうひとつの部屋」としてのバスルームがある。この考え方が、ヨーロッパの水まわり文化を豊かにしてきた要因だといえます。リビングのインテリアを選ぶように、バスルームのタイル一枚、水栓金具ひとつにも注意をはらう。一番くつろげる部屋だから、機能にも、デザインにも「本当の心地よさ」を追求する。バスルームへのそんな美意識が、モナコのホテルには集約されているような気がします。

ブルー系のベッドルームの奥にはブルーのバスルームが。洗面ボールに合わせたタイルのパーツには色の鮮やかさと品の良さがある。部屋ごとに違うソープや小もののセッティングが旅人には嬉しいサービス。(エルミタージュホテルモナコ)
さりげない演出や心づかいがホテルサービスの質を決める
ホテルのサービスは、すべてのサービス業のお手本だとよく言われますが、なかでも「お手本中のお手本」になるのが、モナコのホテルです。たとえば、洗面カウンターの上にさりげなく(しかも美しく)セッティングされたソープやタオル。プレゼントのようにラッピングされたコップ。すっぽりと体を包む上質のバスタオルやバスローブ。
ひとつひとつに心憎い演出や気づかいが感じられ、それがゲストを心からくつろがせ、優雅な気分にさせてくれます。
体の不自由な人に配慮したホテルにも出会いました。身障者や車イスのお年寄りのための部屋は、段差をなくしたり、ドアの幅を広げたり、バスルームやベッドまわりを広くとったりと、きめ細かく心づかいされたもの。でも、部屋のインテリアは一般向けと同様、明るく、くつろげる雰囲気です。身障者用というと、日本では大げさな手すりが目立ち、味気ないものになりがちですが、そんな気負いがないところは、さすがです。仲のいい老夫婦が、不自由な体ながら、ゆったりとモナコの旅を楽しんでいる光景が目に浮かんでくるようです。訪れる人の心を豊かに満たすサービスと空間づくり。ヨーロッパの生活文化の奥行きと質の高さは、私たちに多くのことを教えてくれます。
ひとつひとつに心憎い演出や気づかいが感じられ、それがゲストを心からくつろがせ、優雅な気分にさせてくれます。
体の不自由な人に配慮したホテルにも出会いました。身障者や車イスのお年寄りのための部屋は、段差をなくしたり、ドアの幅を広げたり、バスルームやベッドまわりを広くとったりと、きめ細かく心づかいされたもの。でも、部屋のインテリアは一般向けと同様、明るく、くつろげる雰囲気です。身障者用というと、日本では大げさな手すりが目立ち、味気ないものになりがちですが、そんな気負いがないところは、さすがです。仲のいい老夫婦が、不自由な体ながら、ゆったりとモナコの旅を楽しんでいる光景が目に浮かんでくるようです。訪れる人の心を豊かに満たすサービスと空間づくり。ヨーロッパの生活文化の奥行きと質の高さは、私たちに多くのことを教えてくれます。
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