高齢者医療施設のトイレ

人生の“先輩”達が集うシニアハウス


アメリカでは高齢者のことを人生の“先輩”と敬意を込めて「シニア」「エルダリー」と呼びますが、私が最も感銘を受けたのは高齢者施設での彼らのいきいきとした生活ぶりでした。中でも印象的だったロサンゼルス近郊にあるシニアハウス。ここで出会った(私がひそかにノックノックハウスと名づけた)ユニークな習慣とその水まわりをご紹介します。
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「ノックノックドア」は元気の確認

この高齢者施設は中庭を囲むように建てられており、その中庭に面して各部屋のドアが付いています。私たちを案内してくれた係の人が、部屋のひとつをノックしました。するとピンクのセーターを着た白髪のご婦人が出てきてにっこりと挨拶。「日本からのお客様ですよ」「OK、お待ちしてました」と短い会話のあと、そのご婦人は隣の部屋をノックして、出てきた別のお年寄りに伝えているようです。そのお年寄りがまた隣の部屋をノックして、と繰り返すこと十数回、すべてのドアがノックされた頃、色鮮やかな装いのシニア達が各部屋から現われ、中庭で賑やかなおしゃべりの花が咲きました。
これは、「ノックノックドア」と呼ばれるルール。毎朝起きたら隣のドアをノックして、みんな部屋から出てきて朝の挨拶をするそうです。体調が悪ければ一目でわかってしまうという、お互いの元気の確認ルールには感心させられました。

思い思いの生活が表現された水まわり

これらの施設は、政府の援助や企業からの寄付金で運営されている非営利施設。低所得者向けで、スパニッシュやロシア系の人も多く、多民族国家、アメリカの縮図のようです。施設内の雰囲気は実に明るく開放的です。お部屋も快く見せていただきました。ロシア系のご婦人の寝室は、カーテンからベッドカバーまで優雅なヨーロッパ調。ベッドサイドの写真が目に入ったので、「ご主人ですか、ハンサムですね」と声をかけると、目を輝かせてご主人の思い出話を聞かせてくれました。
彼女の部屋に限らず、どの部屋も家族の写真や思い出の品々、お気に入りの家具で飾られとても個性的です。これはバスルームも同様。タオルやシャワーカーテンを寝室のベッドカバーと同じ色や柄でコーディネートしたり、小さなリトグラフやお花を飾ったり、とてもお洒落で、日本の老人ホームの現実をふっと思い起こしてしまいました。
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