洗面コーナー

使い方に合わせた設備とメンテナンスを


最近では駅やオフィスでもホテル並みの広々とした洗面カウンターが主流になり、化粧や歯磨きなど多目的に使われています。こうした設備や利用実態の変化によって生じてきた新たな問題点と課題を探ってみます。

ぬれやすく、汚れやすいカウンター式洗面。メンテがラクな独立型の見直しを。

洗面器をカウンターから一段落としこめば、水はねしにくい。(TOTO)
蛇口をひねらなくてもいい自動水栓を、カウンターから落としこんだ洗面器につければ効果的。(株)日本ゼオン 提案:坂本菜子コンフォートスタイリング研究所
オフィスでも増えてきたカウンター式の洗面コーナー。たしかに見ばえはいいのですが、お掃除する人にとっては「水にぬれやすいこと」が苦労の種になっています。メンテナンス関係者へのアンケートでも、洗面コーナーのトラブルとして「カウンターの水ぬれ、汚れ」を挙げた人が32.3%。「掃除しても1人使うともうぬれている」「洗った手をその場ではらう人がいるので、すぐ水でしずくだらけになる」と苦心のほどがうかがえます。 とくに問題なのが、水洗金具が洗面器の外側に付いているアンダーカウンター式洗面器。ぬれた手で蛇口をひねるとカウンターはすぐ水びたしになってしまい、その水が測面を伝って床までぬらしてしまうこともあります。このような不都合を解消するためには、メンテナンス以前の対策として、機器の工夫が必要です。たとえば同じカウンター式でも水栓を洗面器の内側に取り込んだり、洗面器をカウンターから一段落としこんだタイプのものにすれば、水がカウンター全体に広がるのを防ぐことができます。いちいち蛇口をひねらなくていい自動水栓にするのも効果的。ただし、小便器の場合と同様、清掃用の解除スイッチを付けないと、かえって掃除がやりにくくなります。また、カウンター式ではなく、以前のような独立型の洗面器は、面積が少ない分メンテナンスがラクなので、その良さを見直したいもの。小物を置ける棚を設置すれば、使い勝手の不便さはありません。
びしょびしょにならない洗面カウンターのあるコンフォートステーション。(設計:方圓館 提案:坂本菜子コンフォートスタイリング研究所)
水栓金具が洗面器の外側にあるとカウンターがぬれる
洗面器に水栓金具がついているとまわりがぬれにくい。

大きな鏡は水ハネも目立つ。洗面と化粧コーナーを分ける方法も

カウンター式の洗面とセットになって普及した大きな鏡も、清掃担当者泣かせです。鏡はまずぬれタオルで汚れを落としてから乾いたタオルで二度拭きしますが、天井まであるような大きな鏡だと、これが大変。「背のびしても手が届かないので、人がいない時にカウンターの上にのって拭いている」「洗面器の上がすぐ鏡になっているので、拭いても拭いても水ハネがつく」という状況です。大きな鏡は空間を広くみせますが、メンテナンス上は問題ばかり。また利用者にとっても、自分の身長より高い鏡は不必要です。そこで提案したいのが、全身が映る鏡をどこか1ヵ所に設置し、洗面コーナ一の鏡は顔が映る程度の小さなものにする方法。さらに、もう一歩進めて、洗面と化粧コーナーを分離する方法もあります。洗面には鏡は付けず手洗い専用とし、化粧コーナーには必要以上に大きくない鏡と小物が置けるカウンターを設置します。こうすれば鏡の水ハネや汚れはずっと少なくてすむはずです。
鏡がインテリアの一部にまでなっているコンフォートステーション。
独立型の洗面器(ペデスタル型)はデザインも美しくメンテナンス性も良い。(XSITE)

会社で歯みがきは、もう常識。私物を入れるミニロッカーを男性トイレにも。

ランチタイム後の歯みがきは、今やどのオフィスでもあたりまえの習慣になっています。とくに熱心なのが女性たち。私の調査でも、「会社で歯みがき派」の女性は4年間で約5割から8割に増加。男性も3割程度の人が会社で歯をみがいています。 そこで洗面コーナーに必要になってくるのが、歯ブラシなどをしまっておけるミニロッカーです。とくに女性の場合、化粧ポーチや生理用品などトイレに置いておきたい私物は何かと多いもの。棚がないところでは洗面カウンターの上に置かれた私物が掃除のジャマになっていることもあります。最近ではこうしたニーズにこたえて各社がトイレ用のミニロッカーを商品化し、導入する企業も増えてきました。また男性も洗面でシェービングクリームやヒゲソリ、整髪料を使う人が増えてきたので、今後は男性トイレにも設置が望まれます。
左: 設計当初から計画された小物棚。 右: オフィス用に開発されたミニロッカー。(INAX)

ペーパータオルとゴミ箱は、トイレを清潔に保つための必需品。

アンケート調査では「洗面コーナーの清掃で困ること」のトップは「髪の毛の始末」、次いで「ティッシュなどのゴミの始末」でした。「髪の毛」はとくに女性トイレに多いトラブル。髪の毛はぬれるとカウンターや洗面器に貼り付いて取りにくく、流してしまうと詰まりの原因にもなります。長い髪を落として平気な女性たちのマナーも問題ですが、洗面器のヘアートラップを付けるなど、機器側の改善が望まれます。 「ゴミ」の問題も同じく利用者のマナーに起因しますが、洗面まわりの適切な場所にゴミ箱がなかったり、数が足りないことが原因になっている場合もあります。ゴミの投げ捨てを防ぐためにも、洗面コーナーには十分な数のゴミ箱(大きさやデザインも考慮されたもの)が必要です。またペーパータオルがないために、トイレットペーパーやティッシュペーパーで手を拭き、細かいゴミを散らかしてしまう状況もあります。私の調査でも、オフィスのトイレにペーパータオルの設置を望む人は女性の7割強、男性は5割近くにものぼります。ペーパータオルやハンドドライヤーは、洗面コーナーの必需品といえそうです。
指が示している部分を押すとペーパーが出てくる。(スイス)

補充が面倒なプッシュ式せっけん。メンテ上の不便さは、まだまだ多い。

洗面台の清掃は、まずスポンジに洗剤をつけて洗面器と水栓金具をみがき、次にぬれタオルで拭きとります。とくに面倒なのが、水栓金具のつけ根の部分。洗面器と金具が直角に交わり、細いスキ間があいている場合もあるので汚れがたまりやすくなっています。清掃係の方たちは子供用の歯ブラシなどで代用していますが、やはり専用の使いやすい棒ブラシが必要です。またカウンター式洗面によく見られるプッシュ式水せっけんも、メンテナンス上、問題が多いもの。タンクがカウンターの下にあるので残量が見えにくく、補充がひと苦労。カウンター側面がはめ殺しの戸板になっている場合には、その開け閉めが重労働です。近頃は一時期より減ってきたものの、もしプッシュ式にするならカウンター側面は開閉しやすい扉にして、内側を洗剤や備品の収納庫にすると便利です。こうして最近の動きをみていくと、新しくなった設備や使われ方の変化に、メンテナンスが追いつかない状況があるようです。多目的に使われれば使われるほどメンテナンスへの負担が大きくなることを認識したうえで、現状に則した対応を考えていきたいものです。
スイスで見かけた、水せっけん、手洗い、ハンドドライヤーが一体化された洗面器。最近、日本でも使われている。
水洗金具のつけ根の部分に汚れがたまる。
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