公共トイレの実例

お客様を迎える“おもてなしトイレ”を目指して


本当のコンフォートステーションを目指すためには、使う人、運営維持する人、メンテナンスする人の三者がお互いに無理することなく、しかし十分に気配りをして三者の輪をはぐくんでいくことが大切です。

大勢の人々によってはぐくまれ始めた道の駅

メンテナンスワーカーが生けた地元の美しい花が人々を迎える。
手洗いとパウダーコーナーを分離し、 使い勝手とメ ンテナンス性に配慮した、 女性が使いやすく明るい パウダーコーナー
メンテナンスマニュアルをもとに研修を受けたメンテナンスワーカーの方々が、 快適トイレを守る。
安達町と建設省福島工事事務所では、5月に花いっぱい運動を展開している町内のボランティア350人によって、道の駅安達のトイレのまわりに6000本のひまわりの苗を植えました。トイレがオープンするころに、ひまわりを一斉に咲かせようという試みです。 苗を植えてから、「オープンの日まで花が咲くのだろうか」「日照りで枯れてしまうのではないだろうか」そんな思いで見守るなか、ひまわりはすぐすくと成長し、オープン1週間前には太陽に向かって大輪が見事に咲き誇りました。 トイレのオープンの日には、地元の渋川小学校の鼓笛隊の元気なパレードが華を添えました。その後は、秋に向けてコスモスの種をまき、9月には地元の採れたての野菜や生産品を売る朝市が行われ、近隣や道路を利用する大勢の人々が訪れています。地域と道をつなぐ「道の駅」の第一歩が始まったのです。
使いやすさを考えた手すりなどが配されたゆったりトイレ ペーパーの補充やダストボックスのゴミの回収は裏のメンテヤードから行われるので作業が楽。
子供トイレの中には、 可愛らしいデザインの犬のベンチが置かれている。

おもてなしスタイリングマニュアル

メンテナンス重視をテーマに設計、デザインされたトイレですが、そのための独自のメンテナンスマニュアルを作り、それをもとに専属のメンテナンスワーカーの方々の研修を行うことで、レベルの高い維持管理を実現することを心がけました。メンテナンスマニュアルとは、このトイレに使われた機器類の特徴とそのメンテナンス方法、インテリアに使われた建材とそのメンテナンスの洗剤や方法など、清掃の手順を絵ときしたもの。それ以外の定期清掃と特別清掃の清掃内容のマニュアルもあります。 維持管理マニュアルとしては、1日の管理体制(例えば、昼間と夜間では使用者数が激変するため、夜間は半分のスペースを閉鎖するシステムを用いるなど)、さらに1週間、年間マニュアルも計画しました。それらの基本のメンテナンスが行き届いた上で、ここでは、心配り、気配りの「おもてなしスタイリングマニュアル」を作成したのが一番の特徴です。安達町の良さを絵や花で表現したり、おもてなしの心を育て、センスアップされたスタイリングの研修もプログラムしました。オープン後、メンテナンスワーカーの方々の活躍ぶりは素晴らしく、「毎日トイレに来て働くのが楽しみ」「毎日こまめに清掃する」「家から花を持って来て生けた」「このトイレの良さをお客様に説明したい」などの声とともに、道の駅のトップバッターとして、気配り日本一のトイレを目指して、お客様を迎えています。
小便器の上にはタバコの投げ捨て防止のために、 灰皿が設置されている。
灰皿のゴミは裏側のメンテナンスヤードから回収できる。
トイレ裏側のメンテナンスヤード。 広 いスペースで清掃作業が楽なうえ、 配 管が露出しているので補修もしやすい。
子供用トイレは、楽しく使 える工夫がいっぱい。
Photo by
Hiroyuki Shinohara
Taku Sudo
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