ホテル・レストランのトイレ

昭和初期の絢爛豪華な美術工芸トイレ


目黒雅叙園は1991年、ホテル、宴会場、美術館、高層オフィスビルなどの多彩な施設として生まれ変わりました。改築計画の主旨は、旧館内にあった美術工芸品を「復元、再構成、イメージ再現、効果装入」するといった再利用の方法です。旧館には昭和初期の画家たちが描いた多数の絵画、そして内装や調度には漆が多く使われ、トイレにも黒漆塗りに蝶貝、螺鈿がほどこされていることは有名でした。それらを再現した絢爛豪華な新生目黒雅叙園のトイレをご紹介します。
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「トイレが独特」の目黒雅叙園

これまでも「雅叙園」といえば、「トイレが独特」と言われるほど、さまざまな美術工芸のほどこされたトイレが評判でした。旧雅叙園には、旅館の玄関から本館に通じる廊下に面したところに太鼓橋のあるトイレが、2階には、天井・壁に美人画が描かれた銭湯を思わせるトイレが、建物の中央には黒漆塗りの壁に螺鈿で樹木や菖蒲が描かれたトイレなどがありました。
改築された雅叙園の1階ラウンジに位置する太鼓橋のあるメイントイレは、その3か所のトイレの特徴あるディテールを取り入れてあります。つまりこのトイレに入ると、旧雅叙園の数か所のトイレのおもかげが、オーバーラップして感じられるというわけです。
入口の大きな扉には絵画がはめこまれ、ひと目ではトイレと気づかないほど。奥には漆芸壁画のある前室が控え、独特の空間を演出しています。
トイレの中には職人芸の施された飾りガラス障子と、朱塗螺鈿細工の扉がそのまま用いられ、以前のゆったりしたトイレの空間をそっくり再現しています。漆螺鈿の修復を担当した韓国の漆芸家全龍福氏によると、「漆は耐久性、湿気を調節する性質もあるので、トイレにはもってこいの材料だ」とのことです。
料亭の入口空間。和と洋とが混在しながら上品なインテリア

料亭の女性トイレの入口にある飾り棚の一輪差し

日本人のゆかしさを感じさせる厠

また、静かなせせらぎの音のなか、日本庭園内にたたずむ数寄屋造りの料亭には厠と呼ぶにふさわしい、和のゆかしさをたたえたトイレがありました。緑を配したアプローチや一輪差しに心が和む飾り棚など、ラウンジ前のメイントイレの華麗さとは対象的に日本情緒の粋を感じました。
日常生活の洋風化が進み、トイレの「和風」が少なくなった今、目黒雅叙園のトイレには日本のさまざまな時代の文化、趣味趣向が表現されています。日本の先人たちが築き上げた華麗な文化の一端として、皆さんにもぜひとも体験していただきたいのが、目黒雅叙園のトイレです。
料亭の男性トイレシンプルななかにも洗練された日本情緒が感じられる。

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