ホテル・レストランのトイレ

アメリカに学びたい卓抜なユーモア精神


ヨーロッパの伝統的なデザインに対し、アメリカの水まわりは卓抜なユーモアにあふれ、その発想の斬新さに驚かされることも少なくありません。このアメリカの水まわりに見るユーモアや陽気さは、機能一辺倒で進んで来た日本の水まわりにある意味でよい刺激を与えてくれるのではないでしょうか。
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実用性より楽しさアメリカ人気質を感じる信号機

アメリカ西海岸にはシーフードレストランが多く見られます。ロサンゼルスのシーフードレストランを訪ねた時のこと、店内は今終わったばかりのアメリカンフットボールの試合の話題で大変な盛り上りよう。私達も一緒になってビールの乾杯で仲間入りをしました。その後ウエイターにトイレはどこかと聞くと「あの信号のところだよ」と店の奥を指さします。「信号?」と不思議に思いながら店の奥に行くと、突きあたりに本物の信号機がドンと居すわっているではありませんか。その左右のドアが男女のトイレなのですが、女性用のドアにはドレスを着た人魚の絵が、男性用には山高帽子に背広姿の人魚の絵が大きくペイントされ、愉快なピクトグラムが歓迎してくれます。この大胆なユーモア性には私もびっくり。日本では、上品なすっきりとしたデザインが主流ですが、ここまでお客を楽しませてくれる店はありません。帰国後、日本の方々にこの写真をお見せしました。すると、必ず返ってくるのが「この信号、トイレが使用中の時には赤になるの?」という質問。この反応には、いささかがっかりしました。アメリカ人は、そういった実用性はさておき、ただオブジェとしての信号機を楽しんでいるだけ。生真面目な日本人のように、信号機の赤や青のランプは、トイレを使うたびに変わるのだろうかという考えは全くありません。彼らにとっては単なあるジョークにすぎないのです。日米の発想の違いと受け止め方の違いが、トイレという小さな空間にも、かいま見える気がしました。
信号と人魚が案内するシーフードレストランのトイレのサイン。陽気でジョーク好きなアメリカの国民性がトイレにも反映している。

シーフードレストランは水まわりにも海の気分

サンフランシスコにあるベジタリアン達が好んで出かけるという「グリーン」という名のレストランは、グリーンサラダや、グリーンスープ、魚貝や野菜を主とした料理と、アルコール類はワインだけ。当然ながら全店ノースモーキングと、すべてに体にいいことを主張するレストランです。ではトイレはどうだろうと入ってみると、中はグリーン一色。エメラルドグリーンの床をはじめ、壁洗面器くずかごまでが、同じ色調で統一され、徹底したコーディネートぶりです。もうひとつ印象的だったのが壁のペイント。床のグリーンのタイルから壁にかけてグリーンのウエーブが描かれ、その上の壁には貝や魚が泳いでいる海の絵が描かれています。その貝の中にオレンジ色の貝が数個あり、その中でも一際浮き立って光っている貝があります。よく見ると照明器具。照明器具と同じ形の貝を壁にもペイントしたのか、それともペイントに合わせて照明器具を作ったのでしょうか。いずれにしても、見る人を楽しませるユーモアのなかに、細部にまで行き届いた神経の細やかさを感じました。
シーフードレストランのイメージをトイレにも持ち込んだあたりは、レストランのサービスの極め付けといえるかもしれません。日本で和風の店で美味しい和食を御馳走になり、いい気分でトイレに行くと、通り一辺のタイル仕上げの洋風トイレでがっかりさせられることがありますが、あくまでも店の「世界」を大切にしたアメリカのトイレづくりの姿勢は新鮮な驚きを与えてくれました。
グリーンという名のレストランはトイレもグリーン。床のグリーンのタイルから壁にかけてグリーンのウエーブが描かれ、その壁面には貝や魚が泳いでいる。
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