トイレのメンテナンスポイントを考える

道具置き場は、トイレメンテの死角


メンテ関係者が最も不便を感じている「道具置き場」。トイレを快適に保つための鍵を握っている場所なのに現実には問題が山積みです。数が少ない、狭い、収納棚がない、モップが干せないなどの道具置き場の実態を探ります。

道具を持っての移動はたいへん。道具置き場は各トイレに設置を。

海外でよく見かけるキャスター付きのカート。
モップ用バケツや”清掃中”の看板もカラフルなデザイン(エレクター(株))
道具置き場の一番の問題点は「必ずしもすべてのトイレにない」ことです。4~5階建ての小さなビルの場合は、1階にしかないのが一般的。係の人は重いバケツやモップを抱えて、ビル内を何度も上下しなければなりません。たとえエレベーターがあっても一般の人への気がねから使わない傾向があるので、段階の上り下りは重労働。トイレの掃除以上に”移動”にエネルギーを使ってしまいます。 これとは逆に大規模なオフィスビルでは、各階ごとか1階おきに道具置き場があるのが普通ですが、1フロアに数カ所トイレがあるので移動のたいへんさは同様です。 また「場所」が不適当なケースもあります。たとえば、メンテ担当者泣かせなのが“外階段まわり”にある場合。冬の寒い日には道具の出し入れの度にふるえてしまいますし、雨の日には補充用のペーパーがぬれないよう気を使うそうです。 もうひとつ困るのが、道具置き場が男性トイレにしかない場合。作業員は女性が多いので、気まずい思いをすることが多いようです。 道具置き場はトイレ清掃に必要不可欠なものなので、理想的にはトイレごとに、最低でも1フロアに1ヵ所はほしいものです。フロア面積が広いビルでは、海外でよく見かけるキャスター付きのカートがあれば、道具や洗剤の持ち運びがラクになります。

足の踏み場もない狭さ。清掃用流しと分けて、十分なスペースを。

清掃道具というと、すぐ思い浮かぶのはモップやバケツですが、実際には実にさまざまなものが必要です。ポリッシャーやカーペット掃除機といった大きなものから、洗剤、ブラシ類、ゴム手袋、タオル、雑巾などの小物まで。これにトイレットペーパーやペーパータオルのストックを加えると、その収納にはかなりのスペースを要します。 ところが現実には、清掃道具置き場は、トイレブースと同じ程度の広さしかありません。しかも、清掃用流しと一緒になっている場合が多いので、その狭さは深刻な問題。内部は足の踏み場もないほどで、置いてあるバケツにつかえてドアが途中までしか開かないケースもしばしばです。 こうした不都合が生じた原因は、つくり手側に道具置き場に対する認識が不足していることです。清掃用流しをむきだしにするのは目ざわりなので、とりあえずドアを付けた。するとそこが自然発生的に道具置き場になったというのが現状でしょう。 今後は、トイレの設計段階から、十分なスペースをもった道具置き場を計画していただきたいと思います。使い勝手からみても「流し」と「収納スペース」は分けた方が便利ですが、やむをえず兼用にする場合は、両方の機能を満たすだけの広さが必要です。

収納は悩みのタネ。機能的な棚やフックを当初から。

道具置き場を見て私がいつも不思議に思うのは、あれだけの雑多な道具を収納する棚やフックがほとんどないことです。もともと狭いのだから、収納の工夫でスペースを有効利用するべきなのに、そのための配慮が全くみられません。洗濯用のカゴを使ったり、ダンボール箱に道具を仕分けしたりと、係の人が思い思いのやり方で整理しているのが実状。どこに何が置いてあるかは、係の人本人にしかわからないのではないでしょうか。 近頃、トイレブースの使い勝手はよく考えられるようになり、荷物棚やフックの位置にも気配りがみられます。これからは、こうした視点を道具置き場にも生かしたいもの。予備のペーパーやタオル、雑巾洗剤などを機能的に収納する棚を最初からつくりつけ、ホウキやチリトリブラシ類を吊るすフックも必要です。このような設備があれば、係の人の手間も省け、掃除の効率もあがるはずです。今後は収納スペースを当初から計画したいものです。
清掃道具はとにかくウエットなものが多い。雑巾の干す場所もない。
ほうきやモップを吊るすフックもなく係の人の工夫に頼っている

「干す」「吊るす」をどうするか。モップ立てやタオル掛けは必需品。

毎日使うタオルや雑巾をどこに干すか。これも係の人にとっては頭の痛い問題です。ロープを張って干そうと思っても、壁がコンクリート仕上げなので、クギやビスも打てません。収納と同様、これも係の人の創意工夫に頼っている状態。両側に吸盤がついたポールを使ったり、ハンガーを活用したり、わざわざ給湯管のある排管室へ行ってタオルを干している人もいます。海外のホテルのバスルームには、パイプを電気であたためてタオルを乾かす「タオルウォーマー」がありますが、この方法は道具置き場にも応用できそうです。 モップの乾燥が、またひと苦労です。壁に立てかけたり、パーティションの上部にフックを付けて吊るしたり。あるトイレでは、お酒の木箱に穴をあけた手づくりのモップ立てを見つけました。モップは吊るしておくと房がまとまってしまって乾きにくく、壁に立てかけると跡がついてしまうので、この方法を考えついたとか。なかなかのアイデアと感心していたら、最近はこれと同じ発想のモップ立ても商品化されているようです。設備担当者の方は、ぜひ導入を検討なさってはいかがでしょうか。
お酒の木箱に穴をあけてつくったオリジナルモップ立て。

段差の解消や換気の問題。課題はまだまだ多い。

道具置き場の入口に一段高くなった“仕切り”があるのも不便です。清掃用流しから水があふれた時に備えた防水の意味があるらしいのですが、この段差がくせもの。キャスター付きの大きな掃除機もいったん持ち上げなければなりませんし、荷物をたくさん抱えて足元が見にくい時にはつまずいてしまいます。 もうひとつ、換気の問題も今後の課題です。道具置き場には濡れたタオルや雑巾、モップなどウェットなものが多く、いつも特有の湿った臭いがこもっています。換気除湿の機能がつけば、タオルやモップの乾燥も短時間にできます。今後はトイレブースだけでなく、道具置き場にも他の部屋と同じように通風や換気を考慮した計画は欲しいものです。
重い清掃道具の持ち運びが多い。SK室の入口や廊下との境に段差があり日常の作業が大へん困難。
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