小便器コーナー(1)

悪臭と詰まりの原因は尿石


「大便器ブース」に次いで、トイレ清掃の難関になっているのが「小便器コーナー」です。なかでも最も厄介なのが便器の目皿や排水管に溜った尿石。鼻をつく悪臭の元凶であるばかりか、放置すると詰まりの原因にもなります。

小便器コーナーのトラブルは、ほとんどが“尿石がらみ”

尿石の問題にはいる前に、清掃係の方々に聞いた「小便器コーナーのトラブル発生状況」をみてみましょう。これは日本トイレ協会のメンテナンス研究会が行ったアンケート結果をまとめたもの。ご覧のように、ほとんどの項目で「頻発する・たまにある」と答えた人が半数から80%以上となっており、小便器が機能上・メンテ体制上、いかに多くの問題を抱えているかがうかがえます。 注目していただきたいのは、「タバコの投げ捨て」「ちらし」などマナーやモラルに起因するもの以外は、すべてのトラブルに尿石が関係していることです。「床の汚れ」「小便器自体の汚れ」「便器の詰まり」「トラップの詰まり」「壁の汚れ」など尿石対策が小便器清掃の最大のポイントになることがわかっていただけると思います。

小便器の目皿や排水口が要注意。毎日の清掃は、尿石との追いかけっこ。

では、日常の清掃では尿石にどう対処しているのか。一般的な小便器清掃の手順をご紹介しましょう。まず、便器の外側やまわりの壁、床に飛び散った尿を雑巾やぬれタオルで拭きます。次に汚れがひどい便器の内側をパット(スポンジ)や棒タワシに洗剤を含ませ、よくこすります。尿石をためないために一番重要なのは、排水口に設置してある目皿の掃除。毎回、必ず取り出し、スポンジに専用洗剤をつけて尿石を取り除きます。ここで注意したいのは、見落としがちな目皿の裏側や内側も忘れずに洗うこと。こうした作業をキチンとやっているかどうかで尿石のたまり方が大きく違ってきます。また目皿の奥にあるトラップや排水口付近も尿石がたまりやすい部分。とくに排水口は棒タワシでゴシゴシと力を入れてこすらないと、すぐに尿石が付着してしまいます。ところが困るのは、排水管の管径に合った専用の使いやすいタワシがないこと。市販の小さなタワシはサイズはちょうどいいが先端に金属が出ているので機器を傷つけてしまう、大きなタワシはその点はいいが太すぎるので管から抜くのに力がいる、という具合。道具の不便さも、尿石退治のネックになっているようです。
排水管の管径に合った専用棒タワシの製品化が待たれる。

尿石の正体はカルシウム化合物。付きはじめると雪だるま式に増えていく。

トイレメンテの大敵、尿石はなぜ生じるのか、その発生メカニズムを探ってみましょう。尿石の素になるのは、尿中に大量に含まれる尿素。この尿素が雑菌によってつくられるウレアーゼ酵素の働きで分解され、アンモニアに変換されると、便器内の液性は弱酸性からアルカリ性に変化します。そしてpHが上昇し、8.0~8.5を超えると、それまで尿中に溶解していたカルシウムイオンが難溶性のカルシウム化合物(炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)に変化。これが尿石と呼ばれるものです。尿石は多孔質であるため、有機物や雑菌が蓄積しやすいのが特徴。したがって、いったん付着が始まるとそれが温床となって菌が増殖し、尿石が増えるという悪循環が生まれてしまいます。こうなると、いくら洗浄水を流す回数を増やしても、掃除の効果はありません。とくに夏場はバクテリアの増殖が盛んなため尿石の付着も進み、悪臭もひどくなります。汚れ、悪臭細菌の繁殖のほか、詰まりも尿石の弊害詰まりは吸い殻や毛髪、ゴミなどの複合要因によって起こる場合が多いのですが、その媒介物になるのも尿石なのです。
表面からはわからないが、目皿の裏側や排水口にべったりと 尿石が付着していて、悪臭、 詰まりの原因となっている

尿石の除去には酸系洗剤が不可欠。ただし機器への影響や排水処理上の問題も。

尿石が付着しやすいのは、次のような部分です。
 ①掃除の盲点になりがちな便器のリム部分
 ②目皿およびトラップ部
 ③排水管の中
 ④便器周辺の壁
 ⑤便器下の床(とくにタイルの目地)
たまってしまった尿石を除去するための方法として一般的に行われているのは、薬剤による洗浄です。尿石はカルシウムが固まったものですが、それを溶解させる薬剤は現状ではありません。そこで酸系の薬剤を使って固くなった尿石をボロボロに粉砕し、 剥離する方法がとられています。ただし酸系洗剤を長期間使用すると機器や配管を傷めるばかりでなく排水処理上の問題もあるので、これらを考慮して製造されたトイレ専用の尿石除去剤(剥離剤)を使うことが大切です。また、こうした薬剤と高水圧洗剤を組み合わせて尿石を剥離する方法も効果的。ワイヤーなどによるパイプ洗浄も行われていますが、これ単独ではパイプ内壁の尿石を完全に剥離することはできません。

「事後処理」より「予防」が大切。メンテ体制と予算の見直しを早急に。

ためてしまうと面倒な尿石ですが、付着を未然に防ぐ方法があります。最も有効なのが、小便器の封水を弱酸性に保つため、目皿部分に固形の尿石防除剤を設置する方法。また、バイオの技術を応用して洗浄水中に尿石防除作用のある土壌菌や酵素を混入させておく方法もあります。日常清掃で大切なのが、尿石がたまりやすい場所の念入りなブラッシング。これを怠ると、せっかくの予防策も十分な効果を得られません。現実には尿石対策はどの程度とられているのかその調査結果が右のグラフです。「薬品を使って尿石を落としている」がトップで49.2%。やはり尿石が付いてしまってから除去する事後処理がほとんどです。「洗浄水に薬品を混入」「目皿部分に薬品を設置」が1割程度と、わずかながら積極派も。しかし「薬品は使わずブラシ等で落としている」「特に対策していない」も根強く残っており、管理者メンテ関係者の認識不足と予算不足が今後の課題といえそうです。尿石対策の重要性を理解し、「事後処理」から「予防策の充実」へと発想の転換をはかる必要があります。
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