小便器コーナー(2)

汚れにくく、使いやすくが小便器の課題


小便器コーナーの床面の汚れの原因となるのは、排尿時のコボシ。これを防ぐためには、ステップを効果的に設置したり、小便器の形状を工夫するなどの対策が不可欠です。使い勝手やデザイン的にも改善の余地が多い「小便器コーナー」の現状と今後を考えます。

尿のコボシやハネ返りを防ぐには、ステップや機器の工夫が必要。

前にも紹介した清掃係の方々へのアンケート調査によれば、小便器コーナーのトラブル、ナンバー1は「小便器下の床汚れ」で、発生率は83.4%にのぼります。汚れの正体は、いうまでもなく排尿時の尿のコボシ。これにどう対処するかがメンテナンス上のポイントになります。尿石の場合と同様、最も重要なのが予防策。なかでも一般的なのが、ステップを設けて立つ位置を指定し、より便器に近づいて用を足してもらう方法です。ただし、せっかくステップをつけても踏み面が広すぎると立つ位置がマチマチになるので要注意。利用者の心理なども考慮して、効果的なステップを検討する必要があります。 また小便器自体の形状も、コボシと密接な関係があります。最近ではメーカー側の商品開発も進み、便器前部が手前にせり出したものや、内側に的マークが付いたもの、尿がハネにくい角度にしたものなどが製品化されています。コボシの被害を最小限に抑えるためには、小便器周辺の素材選びも重要です。最も不向きなのが、天然石のように孔隙(小さい穴)があって尿が浸みこみやすいもの。天然石は尿などのアルカリ汚れをとる酸性洗剤にも弱いので、便器まわりへの使用は避けたほうがよさそうです。メンテナンスから考えれば、トイレに適した建材は、やはりタイル。ただし目地に汚れがたまりやすいので大判のセラミックタイルなどを選ぶといいでしょう。
最近はメーカー側の商品開発も進み、排尿のしやすさ、尿ハネしにくい形状の小便器がみられる。<左>INAX、<右>TOTO

便利なはずの自動洗浄も、掃除の時にはかえって不便に。

新しいオフィスビルでは小便器の自動洗浄は一般的になりつつあります。なかでも主流は赤外線感知型。各小便器ごとに設置された赤外線センサーが便器の前の立った人の姿をキャッチし、立ち去ると同時に自動的に水が流れるシステムです。 これは衛生的にも、また臭気や尿石防止の意味からも優れたシステムといえますが、ただひとつ問題なのは清掃時の不便さがあることです。「便器を洗っていてもすぐ洗剤が流れてしまうので困る」「排水口に棒タワシをつっこんでいる時、水が流れると、便器から水があふれそうになる」「数を数えてタイミングをはかりながら洗っている」と、係の方はとても苦心している様子。苦肉の策として、センサー部分をガムテープでおおって作業している人も見かけました。こうした欠点を解消するために開発されたのが、清掃中だけセンサーの働きを止め、手動洗浄に切り替えられるシステム。これがあれば水の流れを気にせず便器内の掃除ができるし、必要な時に必要なだけ水を流せます。しかし自動洗浄の普及率に比べてこのシステムの採用例は、まだごくわずか。今後は、より積極的な導入が望まれます。
自動洗浄小便器は便利で衛生的。(沖縄、首里城北殿トイレ設計国建) リモコンを使えば、清掃中などはセンサーの働きを止めることができるので便利。(INAX掃除用リモコン)

あとを絶たないタバコの投げ捨て。大きな灰皿の設置で自衛を。

タバコの投げ捨て」も清掃係の方が頭を痛める問題です。アンケート調査でも「頻発する」が約4割、「たまにある」と合わせると約8割のトイレで発生しています。利用者のマナーの悪さはもちろんですが、トイレに灰皿がないのも投げ捨てを助長する一因になっているのではないでしょうか。嫌煙権全盛の昨今、オフィスでも喫煙者の片身は狭くなるばかり、わざわざ喫煙所に行くのも面倒だし、トイレに立ったついでに一服となるのでしょう。トイレに灰皿を置くとトイレでの喫煙を勧めるようなものだという意見もあります。しかし現実にこれだけ多くの投げ捨てがあり、便器の詰まりの原因になっている以上、喫煙の是非はともかくトイレに灰皿は必要だと思われます。それも申し訳程度の小さなものではなく、すぐに一杯にならない大きな灰皿を各小便器横に設置するのが投げ捨て防止に効果的です。

ニーズが高いパーティションや荷物棚。使い勝手を考えた付加機能の充実を。

利用者の使い勝手に目を向けてみると、小便器コーナーには多くの不満や要望が寄せられています。なかでも男性からの要望が高いのが「小便器間のパーティション」。オフィスでは上司や同僚のすぐ横で用を足さなければならないわけで、どうしても隣の気配が気になるようです。従来、日本の小便器は両脇が前にせりだした大型のものが多く、便器自体が間仕切りの役目を果たしていた感があります。しかし最近は、コストやデザイン的な配慮から便器は小型化の傾向にあり、その分、パーティションのニーズが高まっています。 もうひとつ設置が望まれるのは「荷物用の棚やフック」です。出がけや帰りがけにトイレに寄って、という場合、書類カバンや傘をどこに置くかは大間題。小便器ごとに棚やフックを付けてほしいという声は切実です。「女性のため」と銘うった多機能トイレが増えてきた現在、これまで見落とされていた男性側の要望にも耳を傾けたいものです。
男性からの要望が高いパーティション。ヨーロッパで見かけた小便器との色、デザインの調和が美しい例。

リフレッシュスペースとしての、デザイン的な配慮を。

トイレは用を足す場所であると同時に、息ぬきの場でもあります。とくにオフィスでは、気分転換したい時や次の行動に移る前のワンクッションとしてトイレに立つことも多いもの。だとしたら、機能性だけでなく「リフレッシュ・スペース」としての空間演出の工夫も必要ではないでしょうか。 その一例として挙げられるのが、フジタ本社ビルにある男性用小便器です。坪庭に面したガラス張りの部分が小便器になっていて、自然に向かって放尿する解放感を味わえるのが特徴。男性と話していると幼ない頃に野原や雪景色のなかで放尿した思い出を懐かしげに話す方がいますが、このトイレはそんな男性の根本的な欲求にこたえたもののようです。また小便器内に杉の葉や氷を敷き詰めたり、気分を和らげる香りを添えたり、小便器の上に窓をとったりという工夫も見られます。小便器コーナーの壁面に絵をあしらったり、ビデオを流したりと、“目のやり場”をつくる方法も考えたいもの。便器の色やデザインも、もっと多彩な製品が出てくれば、空間演出の幅も広がるはずです。メンテナンス性、機能性と並んで、デザイン性も、これからのトイレづくりに欠かせない視点です。
小便器の尿はねを防ぐために杉の葉を敷きつめる方法は、日本の昔ながらの習慣と知恵。(銀座せきてい)
便器の色やデザイン、絵やグリーンなどで多彩な空間演出を楽しむ工夫が見られる。(横浜博)
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