心配りのサービスメンテ

「おもてなしの気持ち」をトイレにも


トイレの管理に不可欠なのは、気配り、心配りのサービスメンテナンスです。オフィスワーカーの生活の場であり、大切なお客様を迎える場であるオフィスのトイレには、どんなサービスが求められているのかを考えます。
おもてなしの気持ちで季節の演出をしたトイレ。 メンテ性、収納の機能性も考慮。 (方圓館) (提案 : 坂本菜子コンフォートスタイリング研究所)

企業の第一印象を決める「おもてなしサービス」の重要性。

以前アメリカの病院を見学した時のこと、どの病院でも入口で素敵な女性が出迎えてくれて驚いたことがあります。キャリアウーマン風の知的な雰囲気の彼女らは、病院の案内嬢。紺のジャケットに白いブラウス、まっ赤なスカートに同じ色のイヤリングといったお洒落な服装に身を包み、私たち一人一人に、にこやかにパンフレットを手渡してくれました。プレゼンテーションが上手な国、アメリカならではのスタイルですが、迎えられた方は、けっして悪い気はしません。ちょっとしたサービスで、第一印象は格段によくなるものです。 一方、日本では、最先端のオフィスで、こんな経験をしました。ある資料をもらいに行ったのですが、目的の部署をさがすのが、ひと苦労。ロビー階の案内板でやっと見つけてエレベーターで上がると、そのフロアにも受付けはなく、案内板とインターフォンが置いてあります。内線番号を押すと、出てきたのは中年の男性。いかにもお仕事中に席を立ってきたという様子で、ワイシャツの袖をまくり上げ、足元はビニールのサンダル履きです。最先端のオフィスビルとサンダルとのあまりの落差に、いささかビックリ。人員削減、合理化という主旨はわかるのですが、あまりに味気ない応対と感じる方も多いのではないでしょうか。日米の対比に、おもてなしサービスの大切さを実感させられる想いでした。

ロビー階は、セミパブリックな役割。階によって、トイレも多様化の時代へ。

トイレのサービスを考える時、重要なのは「誰が使うか」ということです。オフィスである以上、働いている人が使うのは当然ですが、最近はオフィスビルの機能も多様化し、トイレにもさまざまな要素が求められるようになっています。まず、1階(ロビー階)のトイレは、そのビルに入れば誰でも使えるわけで、ある意味では公共トイレにちかい役割を果たしています。お客様が打合せに行く前に身づくろいをしたり、用を足したりする場合も多く、企業の第一印象を左右する大切な場所でもあります。また、最近は、1階や2階部分をギャラリーやホール、イベントスペースとして一般に開放したり、ショッピングモールやレストランなどの商業施設を併設した複合型のオフィスビルも増えてきました。こうなると、もうオフィスのトイレとは別のコンセプトが必要。利用者の特性や利用状況を想定した設備面での配慮や空間演出も求められてきます。
子ども用手洗いにリンゴのデザインの鏡がアクセント。
ショップ階のトイレはフロアによってきめ細かい配慮がなされている。

ワークスタイルが変われば、トイレも変わる。基準階のトイレにも、もっと配慮を。

時間帯によって利用者の男女比が変わるオフィスではサインを交換。
基準階のトイレについては、使いやすく、メンテしやすいことが大原則。でも、これからは、画一的なものではなく、フロアによって、よりきめの細かいトイレづくりが必要になってくると思います。たとえば、利用者に女性が多いのか、男性が多いのかによって、設計段階から男女の比率が変わってきます。また営業職が多いのか、事務職が多いのかによって、時間帯による男女利用者数のバランスが変わります。ある生命保険会社では、午前中は男性用のサインがあったはずのトイレが、昼休みになると外交から帰った女性たちがお化粧直しをしたり、歯を磨いたりする場に変わるケースを見かけました。近頃はクリエーティブワークも多く”思考空間”としての快適なトイレも求められるケースもあります。 もうひとつ、見直したいのが、役員室や応接室があるVIP階のトイレです。大切なお客様を迎えるトイレには、それにふさわしい雰囲気と心づかいが欲しいものです。私のオフィスでは、いつもトイレに季節の演出をしています。春には桜や梅、夏にはききょうや撫子、秋にはススキやリンドウ、冬にはポインセチアやクリスマスの飾りつけ。おもてなしの気持ちを、トイレにも表現してみたいものです。
季節の花や小ものでトイレを演出。 ゲスト をおもてなしする気持ちを思い思いに表現 して。(左: 方圓館、中: 千駄ヶ谷インテス、 右: XSITE)

企業のアイデンティティを表現するトイレサービスに向けて。

トイレは、つくる人、もつ人(オーナーや管理者、清掃者)、使う人の三者の連携によって、はじめて快適で使いやすいものになります。いくらお金をかけた立派なトイレをつくっても、つくりっぱなしでメンテナンスが十分でなければ、せっかくの設備も台無しです。逆に、狭くて古いトイレでも、いき届いたメンテナンスと心づかいがあれば、利用者も、キレイに使おう、大切に使おうという気持ちになるものです。メンテナンスのネックになっている利用者のマナー低下に歯止めをかける意味でも、心づかいのサービスメンテは必要です。受付けと同じように、オフィスのトイレはその企業の社風があらわれやすい場所といわれます。トイレにも、企業の個性や主張を表現するサービスが求められているのではないでしょうか。
トイレをめぐる三者の輪。
トイレをコンフォートスペースにするためには作る人、持つ人、使う人のそれぞれの気配りが必要。(坂本菜子コンフォートスタイリング研究所)
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